Softbank 孫正義氏特別講演から感じたこと。
非常に面白かったので動画紹介の記事を書かせて頂きます。
ソフトバンクグループの孫正義氏が「SoftBank World 2026」で行った特別講演の動画が、ソフトバンク公式ビジネスチャンネルで公開されました。約1時間、曖昧な形容詞を一切使わず、期限と数字だけで2040年を語り切る内容です。
中小企業のDX・AI活用を支援する立場から見ると、これは遠い未来予測ではなく、明日からの経営判断に直結する話でした。本記事では、前半で講演の概要と主要な数字を紹介し、後半で中小企業のAI活用という視点から私自身の考えを書きます。
第1部:孫正義 特別講演の概要
本動画は、ソフトバンクグループの孫正義氏による「SoftBank World 2026」での特別講演です。主な内容は、2040年に向けたAI革命がもたらす未来と、経営者が取るべき戦略についての提言です。
講演の主な要点
- AI時代のビジョン(0:30〜3:02、5:23〜6:29)
経営者にとって最も重要なのは「鮮明なビジョンと戦略」。2040年には世界のGDPの約20%をAIが占め、AI経済が人類史上最大の産業になると予測しています。 - AIの規模とインフラ(9:33〜12:28、24:06〜27:54)
地球上で100兆個のAIエージェントと10億台のヒューマノイドが活躍する時代が到来します。これを支えるデータセンターには、3テラワット(TW)の電力とクエタフロップス(QFLOPS)級の演算能力、そして年間5兆ドル規模の投資が必要になると論じています。 - 「スーパーヒューマン」への進化(36:42〜41:34)
人間はAIを避けるのではなく、AIを身にまとう「スーパーヒューマン」として共に進化すべきだと強調しています。AIエージェントを自身の分身として活用することで、生産性を飛躍的に高めることができます。 - 経営者へのメッセージ(55:32〜1:05:32)
経営者は「AIだ」と叫び続け、AIネイティブ企業へと変革すべきです。AIに仕事を奪われるのではなく、AIを徹底的に活用する企業が、そうでない企業の仕事を奪う時代であると訴えています。
※この要約はYoutube埋め込みのGeminiによる要約文です。
講演で示された主要な数字
孫氏は曖昧な形容詞を排し、期限と数字だけで2040年を語りました。提示された主要な数値を一覧にまとめます。
| 項目 | 孫正義氏の予測(2040年) |
|---|---|
| AIが占める世界GDP比率 | 約20% |
| AI市場の年間規模 | 約7,000兆円 |
| そこから生まれる年間利益 | 約3,500兆円(利益率50%近く) |
| AI企業の株式時価総額シェア | 世界全体の約80% |
| 稼働するAIエージェント数 | 100兆個 |
| 稼働するヒューマノイド数 | 10億台(人間換算100億人分の労働) |
| AIデータセンターの消費電力 | 3TW(テラワット) |
| 必要な演算能力 | QFLOPS(クエタフロップス=10の30乗)級 |
| 年間のAIインフラ投資額 | 5兆ドル(約800兆円) |
| 新しい経営指標 | ROA=Return on AI(3年スパンで評価) |
ぜひ本編をご覧ください
ここに書いたのはあくまで骨子です。この講演は、要約で読むより本編を通して観る価値が圧倒的に高い内容でした。
私自身、非常に大きな影響を受けました。
AIの重要性はもちろんですが、経営におけるビジョンと戦略の重要性、そしてビジョンとは期限と数字で語るものだという主張は、AIというテーマを外しても成立する普遍的な話でした。
そして未来を予測する力と、そこから逆算して舵を切る力。孫氏は「自分は予言者ではない、調べて考えているだけだ」と言います。ここに経営者としての姿勢が凝縮されていると感じました。
加えて、プレゼンターとして。会場に手を挙げさせながら単位の桁を一段ずつ上げていく展開、聞き手の反論を先回りして潰していく構成、そして最後に一番伝えたい一言だけを残す締め方。話し方そのものからも学ぶことが多い1時間でした。
しかし、感想として一番強いのは、これからの変化の大きさを再認識させられた点です。私たちが経験したインターネットによる変化が想像もしやすく引き合いに出されましたが、AI時代の変化はその何倍もの影響力ですべてが変わっていく。スピード感も私たちがこれまでに経験したこともない速さになるようです。
AIのモデル性能は8カ月ほどで2倍になるサイクルで成長を続けています。3年後、5年後にどうなっているかは予測も難しいレベルです。
そしてフィジカルAIが実用的になるのもそう遠くなく、ロボットとの共生、働くという概念が変わる。
経験していないので想像しづらいのですが、そんな未来をこれから迎えるのでしょうか。
お時間あれば上の動画から、ぜひ本編をご覧ください。おススメです。
第2部:中小企業のAI活用という視点から考えたこと
ここからは、講演を受けての私自身の考えです。
「知性を低コストで調達できる時代」
まず、世界がすさまじいスピードで変わっていくという点には全面的に同意します。そしてこれは、今まで経験してきた技術革新とは質的に異なるものだと私は考えています。
パソコンもインターネットもスマートフォンも、便利になった、速くなった、つながった、という変化でした。今回起きているのは、知性そのものを低コストで調達できるようになったという変化です。
これまで知性は、採用するか、育てるか、外注するかしか調達手段がありませんでした。どれも高くて時間がかかる。その制約が一気に外れつつある。だから影響範囲が業種を選びません。仕事だけでなく、生活も文化も、あらゆるものが猛烈な速度で変わっていきます。
資本力の差ではなくなったので、大企業よりもむしろ中小企業の方が方向転換も早くAi活用のチャンスが大きいと見ています。
しかし、現在の実態はそうではなく、大企業先行で改革が起きている。これはどれほどの影響を及ぼすかの認識の違いから来るコミットの問題、そして体制構築の問題です。
「よくわからない」では済まなくなった——総務省データが示す日本の現在地
問題は、その変化に対して「うちはよくわからないので」と言い続けられる時間が、もう残っていないということです。
取り残されたとき、競合と勝負になるかというと、話になりません。そしてこの差は、後から埋められる種類のものではないと私は見ています。
ここで、日本企業の現在地を示すデータがあります。総務省が2026年7月に公表した「令和8年版 情報通信白書」によれば、日本企業で自社の何らかの業務に生成AIを利用していると回答した割合は86.4%。2024年度調査から大幅に上昇し、米国・ドイツ・中国との差はかなり縮まりました。
数字だけ見れば、日本は追いついたように見えます。しかし同じ白書には、まったく別の顔があります。
生成AI活用による業務変革について組織的な取組の状況を尋ねたところ、日本で「組織的な取組はない」と回答した企業が27.0%。約3割です。白書はこれを、米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高い結果であると指摘しています。しかも企業規模別に見ると、この回答割合は中小企業で特に高い。
ツールは入った。使う人も増えた。けれど仕事のかたちは変わっていない——これが日本の、とりわけ中小企業の現在地です。
「たまたま残れた」と「意図的に使わない」は雲泥の差
現場でよく聞くのが「うちの業務にはAIは使えない」という声です。
これは半分正しく、半分間違っています。確かにAIに適する業務と適さない業務があります。しかし、その見分けと仕分けができること自体が、AIを知らなければできないのです。
外から見ると同じに見えて、実は決定的に違う2つの状態があります。
- たまたま代替されにくい業務だったので、運良く生き残っている状態
- 適さない業務が多いから全面導入はしていないが、使えるところではきちんと使っている状態
短期的な業績には差が出ないかもしれません。しかし前者は自社の業務構造を理解していない。技術が一段進んだ瞬間に、何が代替可能になったのかを判断できず、気づいたときには手遅れになります。後者は、次に何が代替可能になるかを自分で判断できる。この差が、5年、10年で決定的な開きになると私は考えています。
同じAIを使っても、得られる回答は人によって全く違う
「AIは業務に使えない」という声には、もうひとつ別の背景があります。AIの回答品質です。
同じモデルのAIを使っていても、利用者によって得ている回答はまったく異なります。
これは使い慣れの差です。何を渡せば精度が上がるのか。どこで作業を区切れば破綻しないのか。どの工程は任せてよくて、どの工程は絶対に任せてはいけないのか。
設定やプロンプトなど知識の習得も必要ですが、「あの人はああいう人だから、こうやるとうまく付き合える」というような言語化はしなくても脳内で考えている、人付き合いに近いものもあり、感覚的でもあるので体感が早いかもしれません。
だから「試してみたけど、たいした答えが返ってこなかったので使えない」という判断の多くは、AIの限界を見たのではなく、その手前で止まっているだけです。同じ質問を、使い慣れた人が投げれば、まったく違う水準の答えが返ってきます。
そしてAIの性能は日進月歩で進化しています。今の10倍の性能になるのに10年はかかりません。数年先のことです。
回答品質を上げることは、AI活用の前提条件です。そしてそれは、触れている時間の影響が大きいです。
プログラム・AI・人間で分業し、業務フローを再構築する
そのうえで必要になるのが、AIの特性を本質的に理解した上での分業設計です。
業務を、担い手ごとに3つに仕分けます。
- プログラム:ルールが確定していて、100%の再現性が求められる処理
- AI:多少の揺らぎを許容できる、非定型の判断・整理・生成
- 人間:最終責任、例外対応、対人折衝、そして品質の確認
ここで重要なのは、既存の業務フローにAIを挿し込むのではなく、業務フロー自体を組み直すということです。
今ある工程はそのままにして、そのうちの一つをAIに置き換える。これは難しい場合も多い。
効果が限定的なうえに、前後の工程との噛み合わせが悪くなり、かえって手間が増えることさえあります。
変化には大きなエネルギーが要ります。現場は抵抗しますし、一時的に効率が落ちる期間も発生します。それでも、再構築というぐらい根本から見直す必要があると私は考えています。
なぜそこまでするのか。理由は明快です。誰もが低コストで知性を調達できるようになり、環境が根本から変わったからです。
今ある業務フローは、知性が高価だった時代に最適化された設計です。人を採用し、教育し、判断を任せる。それしか手段がなかった時代の答えが、今の組織図であり、今の業務手順書です。前提条件が変わったのなら、最適解も変わります。
環境が変わったのだから、それに適応する。生き残るというのは、そういうことだと思います。
AI活用の成功パターンは「AIにシステムを作らせる」
では、その分業を具体的にどう実装するのか。大きな恩恵を得ている会社を見ていると、共通する型があります。
それは、AIを直接業務に使うのではなく、AIにシステムを作ってもらい、そのシステムを正確に運用するという型です。
実務では100%の精度が求められる場面が多くあります。請求書の金額、在庫の数量、納期の日付。ここで生成AIに毎回判断させると、確率的な出力が混ざるリスクが残ります。そうではなく、業務要件を整理してAIにコードを書かせ、動作を確定させたシステムとして運用する。人間が確認すべきポイントだけを人間が見る。これが最も安定して効果が出るパターンです。
ここで重要な点があります。これはAIがなくてもできたことです。
業務要件を整理してシステム化する。昔からある王道です。ただ、中小企業にとってはコストが合わなかった。数十万円、数百万円の開発費をかけて、月に数時間の削減では投資回収できない。だから多くの業務が手作業のまま残ってきました。
その構造がAIによって変わりました。低価格でシステムが作れるようになったことで、これまで「わかっているけどやれなかった」自動化が、一気に現実的な選択肢になった。私が中小企業の現場で最も大きな変化だと感じているのは、この部分です。派手なAI活用ではなく、業務自動化の採算ラインが下がったことです。
フィジカルAIで、建設業や製造業も対象になる
現実世界での物理的な作業——建設現場や製造ラインの動き——は、今のところまだ代替できない部分が多く残っています。
しかし、フィジカルAIが実用化されれば、この領域もAI活用の対象になります。孫氏が10億台のヒューマノイドを予測したのはこの文脈です。
これは単なる予測ではなく、政策レベルで扱われているテーマです。総務省の令和8年版情報通信白書は、大規模言語モデルと並べて「フィジカルAI」を独立した項目として取り上げ、社会実装における期待と課題、国際競争における日本の位置づけまで整理しています。経済産業省も2025年秋から「AIロボティクス検討会」を設置し、ヒューマノイドを含む多用途ロボットの市場動向を議論しています。
フィジカルAIが来ても、AIを使いこなせない企業はロボットを使いこなすことが難しい、ベースになるAIの知識と経験が足りないからです。
ホワイトカラー領域でAIを扱えていない会社が、ある日突然ヒューマノイドを導入して活用できるはずがない。今のAI活用は、次のフィジカルAI時代への助走です。
経営に必要なのは、予言ではなく先見性
孫氏は講演の中で、自分は予言者ではない、調べて考えているだけだ、と言っていました。ここが本質だと思います。
将来の予測を、自分でゼロから立てる必要はありません。情報は溢れています。政府の白書があり、調査機関のレポートがあり、この講演のような一次情報がある。
必要なのは、情報を収集し、取捨選択できる判断力を持ち、予測される将来を見越して経営の舵を切ることです。
この先見性がないと、あとは運任せの経営になります。たまたま波に乗れば残り、乗れなければ廃れることになります。
正しい判断のために、正しい情報収集をする。判断は人間の役目ですが、情報収集はAIに手伝ってもらうこともできます。
AIがバブルとして消えることは、起こりえない
今後どんな世界になっていくのか、未来のことは誰にもわかりません。しかし、状況から断言できることもあります。
AIがバブルのように一過性で消えていく技術になる。これは起こりえません。
理由は単純です。すでに実務で成果が出ているから、多くの人がその恩恵を体感したからです。
シンギュラリティ(技術的特異点とは、AIが自らより優れたAIを生み出し続け、人間の知能を遥かに超える転換点のこと)の話があったり、倫理観や危険性の問題でAIについてその是非が問われることもあります。
しかし、どこかの国がその手を止めたとしても他国は止めません。得られる恩恵が強力過ぎて経済でも軍事でもイニシアティブが取れる。もうこの流れは誰にも止めることができません。ならばそれを正しく活用する道を模索すべきです。
投資の過熱や個別企業の株価が調整することはあるでしょう。それはバブルの崩壊ではなく、価格の調整です。
技術そのものが消えることはなく、AIによって世界が急激に変わっていくこと、これは絶対的に変えることができない確実な未来です。
予測可能な未来を知り、備え、動く。
この止めようのない変化をまず認識すること。これが大事で、目を伏せて気づかないふりをすることは、後に出遅れとなります。
これまでに経験したことのない大きな変化が来ること。この認識を持っているか否かで様々な判断が大きく変わってきます。
弊社自身もDXコンサルティング、システム開発を生業としてきましたが、AIの波により転換を迫られました。
AX(AI Transformation)支援、リスキリング、Saas領域へ進まない方向転換など。支援企業様のお役に立つことを考えると以前のまま変化せずに事業継続することはできないという判断です。
しかし、悲観的になる必要はなく、この大きな商機に乗る道を模索していきます。
この記事を読んでくれた方が一人でも、その認識を持ち、次の時代への変化の対応に役立てて頂けましたら嬉しく思います。
よくある質問
SoftBank World 2026はいつ開催されましたか?
2026年7月14日、ソフトバンク株式会社が開催しました。今年で15回目となる同社最大規模の法人向けイベントで、テーマは「- AX for Japan - 未来をつくる力が、ひとつになる場所。」です。孫正義氏の特別講演は当日ライブ配信され、その後オンデマンド配信を経て、2026年9月1日、ソフトバンク公式ビジネスチャンネルで一般公開されました。
「ASI Economy」とは何ですか?
ASIはArtificial Superintelligence(人工超知能)の略で、人間の知能を大きく超えるAIを指します。孫正義氏が講演で用いた「ASI Economy」は、そのASIが社会に実装された2040年の経済圏を意味します。規模は世界GDPの約20%、年間約7,000兆円と予測されています。
「Return on AI」とはどのような指標ですか?
孫正義氏が講演で提案した新しい経営指標です。従来のROA(Return on Assets/総資産利益率)ではなく、AIへの投資額に対して、生産性向上やコスト削減という形でどれだけのリターンが生まれたかを測ります。初年度はリターンが出にくいため、3年程度のスパンで評価することが推奨されています。
フィジカルAIとは何ですか?
画面上のテキストを処理するだけでなく、物理世界を認識し、判断し、行動するAIを指します。ヒューマノイドロボットや自律型ロボットに搭載されるAIがその代表例です。総務省の令和8年版情報通信白書でも、大規模言語モデルと並ぶ独立した項目として取り上げられています。
出典・参考資料
- SoftBank World 2026 孫正義 特別講演(ソフトバンク公式ビジネスチャンネル)
- ソフトバンク ビジネスブログ「Future Stride」孫正義 特別講演レポート(2026年7月16日)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)
- 経済産業省「AIロボティクス検討会」参考資料(2025年10月)

