AIに選ばれるサイトの条件 ― 開設間もない事務所サイトで起きたことから考える

Web運用のご支援をさせていただいている法律事務所様が、サイト開設から数ヶ月で生成AIへの質問に対する回答の1位で紹介されるようになりました。よくある検索条件、いわば競合の多いテーマでの結果にも関わらずです。
正直に申し上げて、想像以上の良い結果でした。
立ち上げて間もないサイトで、被リンクもほとんどありません。ドメインパワー、規模感、サイトの実績の積み上げ、選ばれることは相当に難しいと思えるかもしれません。
それでもこの結果が出ている。「なぜ?」の部分を解説致します。
実際に起きたこと
ChatGPTに「大阪でAIに強い弁護士は?」と質問した結果です。


※他の事務所様のお名前は伏せさせていただいています。
検証にあたってはログインをしない状態で実施しています。ChatGPTはログイン状態だと過去の会話履歴を踏まえて回答を組み立てるため、自分で何度も調べたテーマは、自分のアカウントでは出やすくなります。公平性を保つためにログアウト状態・新規チャットで取得した結果です。
なお、この事例の掲載については事務所様のご了承をいただいています。
「事業スキームを読む」ことを重視されて、企業顧問などをしておられます。
過度な宣伝は弁護士法に抵触するので控えさせて頂きますが、ご用命の方は下のURLの問い合わせフォームからご相談ください。
前提 ― 「なぜ選ばれたか」は誰にも断定できない
要因の話に入る前に、前提を共有させてください。
- 生成AIが情報源をどう選別しているか、そのアルゴリズムは公開されていません
- 同じ質問をしても、回答は毎回変わります。
- 仕様変更は予告も報告もなく、静かに行われます
- しかもこの領域はまだ成長期にあり、挙動が安定していません。変更の頻度も高い状態です
ですから、「これをやれば必ずAIに引用されます」と断言する情報には、一度立ち止まったほうがいいと思います。誰も断言できる立場にないからです。
ただし、信頼できる機関の検証報告や、施策と結果の因果関係から高確度と言える仮説は立てることができます。以下、その前提でお読みください。
想定を超える結果をもたらしたと考えられる6つの要因
① 技術的な内部対策が一通りできている
まず土台です。弊社で使用しているSEOチェックの項目、およびPageSpeed Insightsのスコアで、いずれも良好な数値が出ています。タイトルや見出しの構造、メタ情報、内部リンク、表示速度、モバイル対応といった基本項目に穴がない状態です。
AIO文脈で特に重要なのがHTMLだけで内容が読み取れることです。AIのクローラーは、人間のブラウザのようにJavaScriptを実行してページを組み立てるとは限らず、HTMLを取得しただけで去っていくことが多いとされています。スクロールして初めてテキストが表示されるような作りだと、肝心の部分が読まれないまま終わる可能性がある。
これは差別化要因ではありません。土俵に上がるための条件です。ただ、意外とここで落ちているサイトが多いのも事実です。
② インデックスされる経路が複線化されている
ここが「意外と漏れている」ポイントです。
多くの会社がGoogle Search Consoleは設定しています。しかしBing Webmaster Toolsまで登録している会社はぐっと減ります。ChatGPTの検索機能については、Bingのインデックスと、OpenAI独自のクローラーによる巡回の両方が使われているという整理が一般的です。
PCからのブラウズにおいては15~20%程度をBingが占めていると言われています。
Microsoftを会社の標準ツールとしていたり、PC購入時にプリインストールされているので、無視できない数字です。
地図・ローカル情報のプラットフォームへの登録も同様です。地域名を含む質問では、こうしたデータが参照されます。実際、今回の回答にも地図が表示されています。
いずれも無料で、登録作業自体は簡単に終わります。
労力が小さいので費用対効果でいえば、おそらくこの記事で挙げる中で最も高い項目です。

③ 更新頻度と、テーマとしての厚み
この事務所様では、ブログを週に2〜3本のペースで更新されています。
更新頻度も重要ですが、同じテーマで記事が何本あるかも大事だと考えています。AIは1本の記事の出来だけを見るのではなく、そのサイトがそのテーマについてどれだけ語れる存在かを見ている節がある。
参考になるデータとして、Ahrefsが100万件のAI Overviewsから190万件の引用情報を分析した調査があります。それによると、AIによる概要で引用されたページの76.10%が検索結果のトップ10にランクインしていました(出典:Ahrefs「AIによる概要の引用の76%は、検索上位10ページから」)。
つまり、従来のSEOでの評価とAIの引用は強く連動しているということです。「AI対策はSEOとは別物だから、SEOはもういい」という話ではありません。むしろ土台としてのSEOがあって、その上に乗る話です。
④ MEO(地図・ローカル情報)と連動している
2025年12月にAIOに関する本を出させて頂きました。その時点では言われていませんでしたが、最近はMEOの影響が大きいようで、しっかりと抑えておきたいポイントです。
この事務所様ではGoogleビジネスプロフィールの情報が整備され、内容が正確に埋まっています。そのうえで、ブログを投稿した際にビジネスプロフィール側にも更新をかける運用にしているため、こちらも高い頻度で情報が動いている状態です。
「大阪で」という地域を含む質問に対しては、こうしたローカル情報が参照される可能性が高い。
なお、これは地域名を入れて質問したときだけの話ではありません。単に「AIに強い弁護士は?」と聞いた場合でも、AIが利用者の所在地を推定して、地域を絞った回答を返してくることがあります。
サイトとローカル情報を別々に管理するのではなく、片方を更新したらもう片方にも反映される仕組みにしておくことが効いていて、せっかく書いた投稿を無駄にせず、レバレッジを効かして効率的に運用できている、状態と言えます。
そして②で紹介したBingへの登録が、MEOでも対策できます。Bing places for Businessです。

Google Business Profileへの登録が完了していると非常に簡単にBing Placesへの登録ができます。できていないサイトは非常に多いので要注意ポイントです。
⑤ 数字で現状を把握できている
Googleアナリティクス、Search Console、キーワードプランナー。これらで現状を数値として把握したうえで、どのテーマに需要があるかということ、実際の投稿への反応を参考にされています。
「とりあえずブログを更新する」と「サイトの状況や訪問者の反応を正確に把握して活かす」では、同じ本数を書いても結果が変わります。継続的な運用が大事ですが、ただやるのでなく戦略的に運用するかで効果は相当に変わってきます。
⑥ E-E-A-T ― 代替の効きにくい情報があること
そして、今回のケースではこれが本命だと考えています。
まず言葉の説明から。E-E-A-Tは、Googleが「良い情報とは何か」を判断する基準として掲げている4つの観点の頭文字です。
- Experience(経験) ― 実際に自分でやったことがあるか
- Expertise(専門性) ― その分野の知識がどれだけ深いか
- Authoritativeness(権威性) ― その分野で認められている存在か
- Trustworthiness(信頼性) ― 情報が正確で、誰が発信しているかが明らかか
AIはこの事務所についてこう説明していました。
「弁護士ご自身が企業法務向けのAIシステムを開発し利用している。しかもセキュリティに配慮しAWSの大阪リージョン内から外に出ない構成で仕組みも構築している」 ― と。
AIを業務に使っている法律事務所は他にもあります。しかし自分で作ったという事務所はほとんどありません。さらに、処理を特定のリージョン内に限定する設計にまで踏み込んでいる。これは技術的なこだわりというより、扱う情報の性質上そうせざるを得ない、という職業上の要請から出てきた設計です。
ここが決定的だと思うのは、人間が読んでも同じ印象を受ける点です。「弁護士がAIに詳しいらしい」と聞いても、正直それだけでは判断がつきません。しかし「弁護士が自分でAIシステムを作って、データの置き場所まで設計している」と聞くと、この人は本当に分かっているな、と感じる。
AIも同じ判断をしている可能性が高い。E-E-A-Tでいうところの経験(Experience)と専門性(Expertise)が、どこかから借りてこられない形で存在している状態です。
①〜⑤は追いつける。⑥だけが追いつけない
ここまで6つ挙げましたが、性質が違います。
①〜⑤は、正しい手順を知って実行すれば、どの会社でも到達できます。技術的な作業であり、外注もできます。だからこそ、時間が経てば差はなくなっていきます。
⑥だけが違います。買えないし、外注もできないし、真似もできない。その会社が実際に積み上げてきたものだけが材料になります。
そして、AIが情報を集約していけばいくほど、「どこにでも書いてある情報」の価値は下がっていきます。要約されて、出典を見に行く必要すらなくなるからです。最後に残るのは、そこにしかない一次情報だけです。
「うちにはそんな特殊な材料はない」と思われた方へ
ここまで読んで、「特殊な経歴の先生だから出せた話でしょう」と思われたかもしれません。
しかし、私が中小企業の経営者の方に「御社の強みは何ですか」とお伺いすると、多くの方がすぐには答えられません。しばらく考えて、「誠実な対応でしょうか」「お客様との距離が近いことですかね」といったお答えになる。
これは強みがないのではなく質問の聞き方の問題です。理由は3つあると考えています。
- 当たり前になっている ― 毎日やっていることを、異常なことだと認識できない
- 比較対象がない ― 強みは他社との相対的な概念なのに、経営者は他社の内部を見たことがない
- 抽象的な質問には抽象的な答えしか返らない ― 「強み」という言葉自体が抽象的すぎる
今回の事務所様にしても、先生ご自身は「システムを作った」ことをそこまで特別だとは考えておられませんでした。必要だったから作った、というだけの話です。外から見ると、それが強力な材料になっている。
強みを引き出す3つの質問
ですので、「強みは何ですか」と聞くのをやめます。代わりに事実を聞きます。評価するのは、外から見ている側の仕事です。
1. お客様に言われて「そこ?」と思った褒め言葉は何ですか
自覚のない強みは、他人の口を借りて出てくることがあります。自分で意識していない部分を評価されたときの違和感 ― そこに、外から見た価値が現れています。
2. 他社がやりたがらないのに、御社がやっていることは何ですか
面倒だから他社がやらない。それを続けているなら、それは参入障壁そのものです。本人にとっては「面倒な作業」でも、外から見れば選ばれる理由になっています。
3. どういう仕事は受けないと決めていますか
断る基準には、その会社が何を大事にしているかが表れます。何でもやります、という会社より、これはやりません、と言える会社のほうが輪郭がはっきりする。得意分野も、この裏返しとして見えてきます。
いずれも、抽象的な評価ではなく具体的な出来事を思い出してもらう質問になっているのがポイントです。人は評価は苦手ですが、出来事は語れます。
引き出した情報は「企業ファクトシート」にまとめる
ヒアリングして終わり、記事にして終わり、ではもったいない。出てきた情報は、構造化して一つのドキュメントにまとめておくことをおすすめします。
入れる項目の例です。
- 沿革と、創業の経緯
- 代表者・担当者の経歴(一見無関係に見える前職や資格こそ書く)
- 実績の数値
- 受ける仕事・受けない仕事の基準
- お客様の声の原文(要約せずそのまま)
- 自社で使っている用語の定義
- 対応地域・対応範囲
公開情報と内部情報で分けると幅広くカバーできます。
これを一度作っておくと、転用先が広いのです。
- 会社概要ページ、担当者プロフィールページの元原稿になる(=E-E-A-Tの根拠として機能する)
- 構造化データ(企業情報・人物情報)のマークアップに落とせる
- ブログ記事の一次情報のネタ帳になる。ネタ切れがなくなります
- 社内でAIを使うときに、自社を説明するためのソースになる
4つ目が、実は一番大きいと思っています。
AIに提案書を書かせる、営業メールを作らせる、社内資料をまとめさせる。こうした場面で毎回ゼロから自社の説明を書いていては手間がかかりますし、書くたびに内容がぶれます。自社を正確に記述したドキュメントが一つあれば、それを渡すだけで済む。
つまりこの棚卸しは、「SEOのための作業」ではありません。これから自社でAIを活用していくための基盤整備です。結果としてSEOやAIOにも効く、という順序で捉えたほうが、投じる労力に見合います。
まとめ
開設から数ヶ月のサイトが生成AIの回答に登場した要因として、6つを挙げました。
- 技術的な内部対策が一通りできている
- インデックスされる経路が複線化されている
- 更新頻度と、テーマとしての厚みがある
- MEO(地図・ローカル情報)と連動している
- 数字で現状を把握できている
- 代替の効きにくい情報がある(E-E-A-T)
役割は2つに分かれます。
①〜⑤は「届ける」ための条件。⑥は「選ばれる」ための理由。
中身があっても届かなければ、候補にすら入りません。届いても中身が代替可能なら、他社に差し替えられて終わりです。片方だけでは成立しません。
しかし迷ったときは本質に立ち返るのが良いです。AIも検索エンジンも、目指すものは同じです。「利用者が本当に求めている情報を届けること」。ここから外れる施策は長続きしません。
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